私は公ギルドのギルドマスターチュウ兵衛。
ひよっこ共の面倒をみたり情報を売ったりするのが仕事だ。
私ほどのハムになると滅多に自ら足を運んで
情報から私のもとにやってくるのだが、
たまには体を動かそうと再び珍しく外に出た。
これはその時の話だ……
買い出しに街の市場に行こうと歩いていると、
途中の森からなにやらいい香りがするじゃないか。
美味しそうなケーキやお茶の香り……
私は引き寄せられるようにフラフラと香りのする方に向かう。
するとどうだろう。
森の奥ではウサギ達がお茶会を開いているじゃないか。
お茶会の場とは皆気が緩み色々な情報が飛び交うものだ。
ここはチャンスとばかりに私はこっそりと裏に回り込み
ウサギ達がなにか美味しい情報を零さないかと
聞き耳を立てる。
私の耳はウサギのように大きくはないが、
小さな音も聞き取れる優れた耳。
私の鼻は大きくはないが
美味しい物をしっかりと嗅ぎ分ける優れた鼻。
私の体は決して大きくはないが、
その分どんな小さな隙間でも隠れることができる優れた体。
ところが、そんな私が器用に隠れているにも関わらず、
ウサギ達は私の存在に気づき茶会に誘ってくれたではないか。
侮りがたし、ウサギ達。
やはりあの大きな耳は伊達ではないようだ。
いささかばつの悪い私はウサギ達の申し出を断ろうかとも思ったが、
ここで遠慮しては公ギルドマスターの名が廃る。
潔く、快く私はその申し出を受けることにした。
ここは公ギルドマスターの腕の見せ所。
ウサギ達と仲良くなって沢山情報を引き出してやろうと
勧められるがままケーキを頬張る。
。
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。
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出されたケーキを一口食べて私は衝撃を受けた!
そう。とてつもなく美味いのだ。
日頃から食に関してはうさぎになぞ負けるはずも無い、と思っていたのだが、
このケーキは美味い。いや、美味過ぎる!
ハム生のなかでこんなに美味いものは食べたことがない!
そのあまりの美味さに我を忘れた私は
最初の目的も何処へやら。
椀子そばのように差し出されるケーキを黙々と食べはじめたのだった。
我を忘れて美味しいケーキを食べ続けぺろりとたいらげてしまった私は
満腹になるといつの間にか満足からぐっすりと眠ってしまった。
そして当りが真っ暗になった頃に目がさめた。
当然その頃にはウサギ達はいるはずもなく、
買い物をしそこね、情報を入手出来なかった私は
トボトボと家路についたのだった……
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