2013年9月22日日曜日

たそがれハム兵衛 出逢い篇

拙者の名はハム兵衛。
こう見えても刺客を生業に
諸国を旅する一匹狼ならぬ一匹ハムでござる。
これはそんなある日の出来事。











隣国へと移動中のことであった。
拙者はいささか歩き疲れ、
山中の古びた小屋の前で休憩をしていた。
次の宿場町まではなんとか陽が落ちる前には到着出来るだろう。
煙草でも噴かそうかと火の用意をしようとした所で、
なにやら鳴き声が聞こえることに気づいた。













「物の怪か…?」と訝しんだ拙者は
声が聞こえてくる古びた小屋の中へとゆっくりと入ってみた。

しかし、小屋の中には物の怪どころかなんの気配もない。
耳を澄ませてみると、どうやら鳴き声は
小屋の外から聞こえてくるようだ。
よくよく聞き耳をたててみれば、
その声は獣でも物の怪でもなく、童のようだ。
このような山中で何故……

気づいてしまった以上知らぬフリは出来ぬ故、
仕方なく探すことにした。













泣き声をたよりに探していると、
山の中腹ほどの竹林のなかに、
乳母車に乗せられたままの童を見つけた。
その側には弱々しい文字で「この子をよろしく」と
認められた手紙が添えられていた。

泣きじゃくっていた童が拙者に気づくと
愛らしい笑顔をみせる。そして、
「ちゃん!」と声をあげるではないか……

拙者は一匹狼ならぬ一匹ハム。
家族もなければ故郷もない。
拙者が童の父御ではないことを告げるも
童には理解出来ぬようで、いくら言っても
拙者のことを「ちゃん」と呼ぶばかり…













このままでは陽が落ちるまでに宿場町に付けなくなる…
誰の子とも知れぬ童をこのまま捨て置くことも出来るが、
それではハム道に反する。
一刻ほど悩んだ末、乳母車を押して宿場町へといそいだ。


そう、これがチュウ五郎と拙者の出逢いであった。

2 件のコメント:

  1. 返信
    1. ありがと〜w
      ネタ思いついたら続けてみようかと思いますだw

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